SIM's memo

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思い出すことなど(2)

 音の編集は、ひとり集中して対象にむかっていく孤独な仕事である。まわりが見えなくなってきた時に、ふと過去のことを思い出す。プルーストは紅茶にマドレーヌを浸した時、遠い記憶が現前に蘇ってきたが、こちらは仕事の時なのだからまったくもって味気ない。
 そんなひとり集中して仕事をしている時、友人だった女性たちのどーでもいいようなことをたまに思い出す。先日思い出したのは、20代半ばの頃頻繁にあっては食事をしていた友人のこと。彼女はことあるごとに、「あーセックスしてー」と言っていた。挙げ句には、彼氏とのセックスをぼくに話していた。食事中にである。ぼくは、「へー」とか「ほー」とかしか反応していなかったと思う。それ以上、彼女に何を言えばいいのかわからなかったし、今でもわからない。
 
 そういえば、30代になってから、同僚の女性と仲良くなることが結構あった。そして最終的にはぎくしゃくする*1。そこに微妙な感情がぼく側に生まれてしまうのだろう。相手側はどうなのだろう。
 前に勤めていた会社の同僚のことを結構好きで告白もした。しかし、あれこれと言い訳をされてうやむやになってしまった。その際、彼女から自分のいささか複雑な家庭環境を、そして彼女が過去にどんなことがあったのか、それをあなたは受け止めてくれるのかと言われたことがあった。ぼくのこころで二の足を踏んでいたのを彼女は見透かしていたのだろう。
 それから、彼女から警戒されたと勝手に判断したため(他の理由もあったのだが)、ぎくしゃくしてしまった。そしてぼくは別な理由でその会社を辞めた。おそらく辞める前後あたりから彼女に恨まれているような気がしていた。夢に毎晩彼女がでてきた。その夢の詳しい内容は忘れてしまったが、生々しい印象だったことは今でも記憶している。
 
 昨年末、前の会社で世話になった元上司が退職するというので、何故か招かれて送別会に顔を出した。同じテーブルには、ぼくと同世代の口数は少なそうだけど真面目な感じのする男性と同席になった。聴くと、ぼくが辞めた後に入社した方とのこと。そして名前を聞くと、そのぎくしゃくしてしまった彼女と同じ名字。彼女が結婚したというのは聞いていたが、相手がまさかぼくの目の前にいるとは。まったく因果なものである。まあ、そんなものでもあるけれども。

*1:このお題のテーマは「余は如何にして女性とぎくしゃくとなりにしか」である。