SIM's memo

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A:ありがとう

 「ありがとう」は、感情の素直な表現だとばかり思っていた。けれども、よくよく考えてみると、韜晦した感情やねじくれた思いなどから出る「ありがとう」もあるなあ、と思う。一番「ありがとう」を言いにくいのは親に対してである。何故だろう、と考えてみたら、親への「ありがとう」には「さようなら」のニュアンスがあるような気がしている。となると、それが言えないというのは、まだ親離れできていないのかもしれない。物理的に親から独立して生活していても、親との意識無意識の紐帯は切っても切れない。
 
 「ありがとう」が素直に言える関係は、からりとしていていい。依存しあっている感じがしない。やはり距離感の問題である。ここの「ありがとう」には、「さようなら」のニュアンスはない。つながっていくための潤滑油だ。だから、あの時「ありがとう」と何故言えなかったのか、と悔いることが多かった。一番悔やんだのはやっぱり、以前ここでも書いた19の時に付き合った人に対してであろう。思い出すことはない、と言っておきながら、瞬間的に振り返ってしまった。
 とまあ、あれこれ考えていたら、20代の頃に「ありがとう」とあの時ちゃんと言っておけば…ということが多い。さて30代、ぼくは人として成長できたかどうか、かなーり怪しい。けれども、どんな時でも、苦手な相手でも、行為についてはちゃんと「ありがとう」と素直に言える人間になりたい。だけども、たまには、好きな人には皮肉まじりで「ありがとう」とも言ってみたい。気づいていないだろう、というのが前提だけれども。