SIM's memo

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思い出すことなど(7)

 先日、荷物の整理のため神奈川の家へ行った。今ではマンションが林立し、駐車場が増えてしまい、大変つまらない街になってしまったなあ、と行く度に思う生まれ故郷。今から20年程前には、商店街をふくめて活気があった。そうした中、僕にとって思い出深いのが、銭湯と駅前の商店街にあった小さな書店とレコード店だった。
 
 僕は風呂に入るのが億劫で仕方ないと思う性分なのだが、何故か銭湯は好きなのである。だから神奈川へ行くと、家にある風呂に入らずに必ず銭湯へ行っていた。その癖は今でも変わらない。ただ、銭湯ではなく温泉施設という違いだけだけど。立派な富士山が描かれたタイル、黄色いケロヨンと銘打たれたプラスチックの桶、瓶のコーヒー牛乳、しょぼい中庭。今でもありありと思い出せる。銭湯から駅に向かって歩いて行くと商店街があり、駅近くにはレコード店があった。小さいお店だったけど、田舎で暮らしていた僕には夢のような品揃えだった。その店でCDを購入する度に、お店オリジナルの丈夫なビニール製の袋をくれた。今でも十数枚持っている。そして、某私鉄系列の書店。小学生のころ、祖父に連れられて散歩していた時、祖父が好きな本を買ってもいいと言ったので、僕は小学館のは虫類の事典を買ってもらった。そんな僕を祖父はどう思っていたのだろう?しかし何故、は虫類事典が欲しいと言ったのだろう。おそらく、その事典シリーズを揃えたくて、たまたまは虫類だったのかかもしれない。今でも覚えている祖父との最後の思い出である。
 
 荷物の整理が一段落ついたので、久方ぶりに駅前の商店街を歩いた。知っているお店はわずかしかなく、多くは飲み屋になっていた。レコード店も本屋はすでに閉店して久しい。街は生き物だから、呼吸もするし変化もする。ただ、変化の多くは哀しみを伴う。だから、思い出は色褪せない。