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日本国憲法前文をはじめてちゃんと読む(2)

なにゆえに前文を?

 現行憲法と改正草案を読み比べる前に、何故おまえは条文を読むのではなく前文を読むのか?という点を述べておきたい。それは以下の2つの理由からである。

  1. 前文に現行憲法の原理が明確に宣言されているから
  2. 現行憲法の前文の法規範性

1について。現行憲法の前文で宣言されている原理とは、1)国民主権、2)平和主義、3)基本的人権の尊重である。前文にこそ、憲法のスタンスが凝縮されている。いわばエッセンスみたいなものだ。先に述べた3つの原理を踏まえた上で、現行憲法と自民党が2012年に発表した改正草案を読み比べてみたい。
 2について。前文とは一言でいえば、憲法の目的と基本原則が明記されている文である。本文とは違うのだから、法的性質を持たないだろうと思われるかもしれない。しかし、前文にも法的性質があると見られるのが通説である。これを専門用語で「法規範性」があるという。「法規範性」とは、法的に拘束力があることを意味する*1。これは戦後まもない昭和21年9月の貴族院・帝国憲法改正案特別委員会で貴族院議員の佐々木惣一(京都帝国大学名誉教授)の質問に対する金森徳次郎国務大臣の答弁*2で早い時期から承認されてきたものである。
 
 以上から、現行憲法および改正草案の前文を読むということは、そもそも僕たちの生活は何によって守られているのかを再認識することでもある。前文にこそ、この国のスタンスが見えるのである。だからこそ、前文をおろそかに出来ないし、ここをしっかり読み込むのが大切だと判断したからだ。次回から、現行憲法と改正草案の前文を読み比べていく(続く)。

*1:現行憲法における前文の法的性格を論じた服部守「憲法前文の法的性格と内容」『龍谷大学大学院法学研究』第8号所収、2006年が参考になる

*2:「前文の方は事実を記述したり、大体の方針を表明したり、中には又法的効果のあることをも規定してあります」