SIM's memo

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 これからが桃が美味しく食べられる時期だという。なので、この時期は桃をもらうことがちょこちょこある。


 ふと思うと、今年は妙に桃づいているような気もする。4月に行った岡山は倉敷の桃太郎ジーンズ。あまりに高価で。悔し紛れに桃太郎ジーンズ特製の小銭入れを購入した(これは千円)。そして先日仲間たちと夏祭りと灯籠流しを見た帰りに寄った焼き鳥屋。そこで「鳳凰美田 完熟もも」なるリキュール酒のソーダ割りを呑んだのだが、あまりに美味しくもう一杯呑んでしまった(ちなみに、僕は下戸である)。蔵元は栃木県は小山市にある小林酒造。なんでも、『天満天神梅酒大会2013』リキュール部門で優勝し、日本一の証である「天下御免」の称号をいただいたお酒だとか。呑むとまさしく桃そのものの味。果肉がしっかり残っているので、あたかも桃を食べているかのようだった。
 
 「鳳凰美田 完熟もも」を呑みながら、『詩経』に収められている「桃夭(とうよう)」という漢詩を思い出していた。「桃夭」とは、「嫁ぐ若い女性の美しさを桃のみずみずしさにたとえた言葉で、転じて女性の婚期を意味する」(大辞林)。

桃之夭夭  桃の夭夭(ようよう)たる
灼灼其華  灼灼(しゃくしゃく)たる其の華
之子于帰  之の子于(ゆ)き帰(とつ)ぐ
宜其室家  其の室家(しっか)に宜しからん
桃之夭夭  桃の夭夭たる
有賁其実  賁(ふん)たる其の実有り
之子于帰  之の子于き帰ぐ
宜其家室  其の家室に宜しからん
桃之夭夭  桃の夭夭たる
其葉蓁蓁  其の葉蓁蓁(しんしん)たり
之子于帰  之の子于き帰ぐ
宜其家人  其の家人に宜しからん

若々しさの象徴たる桃の花の色、桃の実の豊満さ、そして桃の葉の艶やかさに、これから嫁いでゆく娘が嫁ぎ先で仲睦まじく暮らしていくだろう(いってほしい)という気持ちを詠った詩。「夭夭」「灼灼」たる桃の実の味わいを思い浮かべながら呑んでいると、隣にいた友人が一口欲しいと言ったので、グラスを差し出した。彼女も同じお酒をロックで注文した。
 
 友人よ、この詩を思い出しながら、僕はあなたのことを思い浮べていたのだ。当然気づかないだろうが、僕たち同年代はすでに「灼灼其華」ではないけど、あなたは今まさに「有賁其実」だ。色々と苦労しているあなただからこそ、幸せになってほしい。あなたのこころは「其葉蓁蓁」なのだから。