SIM's memo

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思い出すことなど(10)

 高校時代のことを思い出すと、ほとんどいい印象をもっていない。まず悲しく寂しい思い出が浮んでくる。友達があまりいなかったこと(いつもひとりで行動)、失恋、友人の死etc...。男子校ということもあり、思い出はモノクローム大瀧詠一)である。
 そんな母校は、創立して1世紀以上経っているということもあり、様々な立場にあられるOBたちにお会いする機会が増えてきた。その時必ず話にのぼるのが校歌である。教習所の教官のひとりが同じ高校の出身で、運転中一緒に校歌をうたった。取材先の方が高校OBで一緒に校歌を歌い、打ち解けることができた。卒業して20年近く経つのに、まだ校歌が歌えると人に話すと驚かれる。小・中・高校歌の作詞・作曲者が同じというのもあるのだろう。いずれもまだ歌える。共通言語としての校歌が思わぬところで身を助けてくれた。
 
 校歌だけではなく、ただ先輩ということで、何かと気にかけてくれる方々にも恵まれた。仕事や研究活動において、そういう方々の力添えに幾度となく助けられた。今から10年程前、とある資料館の学芸員の方が高校の先輩で、取引先として出入りしていた。僕が出入りする以前は、受注がめっきり途絶えていた。しかし僕がお邪魔すると、後輩ということもあって、早速仕事をいただくことができた。その後も折に触れて図録を恵贈して下さったり、様々な資料なども提供して下さった。ほどなく、当時の勤め先で社長と喧嘩して僕がクビになったので、退職の挨拶へ伺ったときも色々と励まして下さった。他の仕事に変わっても、会えばいつも通り変わらず接して下さる。そういう人を先輩として、ひとりでも持てたというのは、いい思い出のない高校のおかげではある。いい思い出はなかったが、卒業してから受けた恩恵は計り知れない。
 
 今日は高校時代の友人が亡くなって21年になる。時々、その友人の声が僕の鼓膜を刺激する。少しずつ、かれの面影がぼんやりしてきたが、声は今なおはっきりとよみがえってくる。そして亡くなる当日、最後にあった時の光景もよく覚えている。あの時のことを思い出すと、今でもリアリティーが感じられない。
 実家のほとりにあった彼の墓は移動したという。運転免許を取得してから、彼の実家近くに幾度となく行ったのだが、お墓を見つけることができなかった。3年半前のことである。その時一緒に付き合ってくれた彼女は、別な人の元へ嫁いだ。