SIM's memo

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讃岐巡礼&苦行記(1)

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                琴電琴平駅の駅舎
 
 瀬戸内海地方の暑さは宇都宮と訳が違う。海から運ばれる湿度が肌にまとわりつき、やさしく包む訳ではない。むしろ日差しとともに、これでもかと「夏」を体感させてくれる。1年以上ぶりの瀬戸内海。

 2日目。拠点の倉敷から瀬戸内海を縦断すること1時間半。坂出で土讃線に乗り換えて、丸亀を経由し琴平へ。いわずとしれた金刀比羅宮が鎮座する門前町だ。
 JR琴平駅は1889(明治22)年5月に開通した讃岐鉄道発祥の地。当然ながら、開通と同時に駅も誕生。1922(大正11)年に建てられた洋風建築の駅舎は、2012年に国登録有形文化財に指定された。
 
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 駅前ロータリーには大きな車輪が飾られていた。C58蒸気機関車(愛称:シゴハチ)の動輪で、1970(昭和45)年まで活躍していたという。思いのほか素敵な動輪で、この手にさほど関心のない僕でも駅舎を撮り忘れてしまう程珍しいものだった。
 
 JR琴平駅を歩いて10分あまりすると金刀比羅宮参道に行き着く。ここから700段以上ある本宮まで行くことになるが、この時点で本宮へ行くつもりはなかった。では何故行ったのか?大門あたりの看板で目にしたこの御守りのためである。
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「幸福の黄色いお守り」という、どこかで聞いたフレーズのお守りがなんだか有難く見えてしまったのだ。デカデカと黄色い物体が眼前に映ればインパクトはかなりある。まんまと大物主神(おおものぬしのかみ)の偉力に嵌まってしまったという次第。
 そんな訳で杖も借りずに(後で猛烈に後悔する)、首にタオルをかけたオッサンが黙々と不揃いな階段をのぼる。
 
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(写真上)大門内側にある「五人百姓」というお土産やさん付近。「五人百姓」は、古くから金毘羅大権現の神事に協力し、経済的な援助を惜しまなかった。そのため、伝統的に立ち入り営業を許された先祖代々の特権としてここで飴等を売っている。
 
 湿気を含んだ暑さが厳しく、汗がとまることがない。水をのみのみひたすら階段をのぼる。途中、御厩近くのクスノキの下、賢木門手前の廻廊にあるベンチで休む。汗がとまらず、とにかく暑い。顔がほてるので、持参したフェイシャル・ペーパーで顔を拭くこと数度。メントールが配合されているせいか、スーッとして気持ちがいい。そして扇子で顔あたりをあおぎながら、涼しい顔をしてのぼっていくカップルたちを恨めしそうに眺めるオッサン。これ以上、ここで休んでいたら動けなくなると思い再び歩く。スギなどに囲まれた「闇峠」を過ぎ、本宮目前の最後のとてもキツい階段のある「御前四段坂」が運動不足の身体にダメージをこれでもかと与え続ける。けれども、もう厭だと思わなかった。ここまできたら、何も考えずにのぼるのみ。そうは思ったものの、一気にのぼることができなかったので、途中で休んでは目の前にある本宮入口の門を見て気力をふりしぼる。暑くて息も絶え絶えになりながら、無心になれると思ったが決してそんなことはなく、余計なことばかり考えてのぼってしまった。煩悩はそう簡単におとせる訳じゃない。宿痾みたいなものなのだ。
 そんなことを考えつつ、口をあんぐり開けながらのぼると、ようやく本宮に到着した(つづく)。