SIM's memo

Books, Foods, Rock 'n' Roll…and more!

つくる、いただく、かんがえる

 先日、勉強のためにとあるカフェへの取材を同行させてもらった。

そのお店は、店長さんひとりで2006年1月から開いているお店。ご実家でつくられている無農薬野菜を中心の料理やデザート等を提供している。アットホームなお店の雰囲気は、店長さんの人柄をそのまま映し出しているのだろう。
 
 取材過程をひととおり見させていただいた後、写真撮影で用意していただいたサラダとジャガイモと玉葱のポタージュをいただいた。どの野菜も美味しいのだが、それ以上に驚いたのが、ひとつひとつの野菜に存在感がしっかりあるということ。レタスや赤キャベツ、ピーマンにキュウリなどどの野菜にも力強さが感じられる。これは素材のよさも去ることながら、店長さんの野菜に対する向き合い方がとても真摯なのではないかと思った。
 
 お話を聞きながら、20代でお店を開き、様々な人たちに支えられて今があると周りへの感謝の言葉を口にする店長さん。ご実家が専業農家でしかも無農薬野菜づくりにこだわりつづけて幾星霜。こだわりは勿論だが、信念がないとできないことである。そんなご両親の背中を見ながら成長したためだろう。店長さんもきっと内なる信念というものは熱いんだろうなと思った。
 
 次の日、仕事の件でTOKIOに行って来た。その際、世話になっている方と神田神保町のいもやで遅いお昼を食べた。いもやに入るのは15年以上ぶりだろうか。いもやに行ったことがある人はわかるだろうが、独特の緊張感漂う店内。お客さんは6名ほどいただろうか。
 メニューは天丼とえび天丼のみ。ふたりとも天丼を注文。待つ間、仕事のプランを話すも、あまりにも張りつめた店内の雰囲気で、僕は萎縮して声が小さくなってしまった。しゃべりながら、長身痩躯の男性が黙々と天ぷらを揚げているのをちらちら見る。カウンター内にいるおじさんもおばさんも莞爾ともしない。ひたすら、この場に与えられた仕事を粛々とこなしていた。
 おひつから丼に盛られたごはんに、揚げたての天ぷらをのせて天つゆをかけまわすと、静寂な店内にジューッと音がした。そして無愛想に目の前に天丼としじみの味噌汁が出された。ぼくとその方は黙々と天丼を食べた。揚げたての天ぷらは当然ながらさくさくとし、衣があじわい深い。天ぷらに欠かせないキスを食べると、キス独特の臭みはあまり感じられず、ごま油の風味に包まれていた。
 
 味わいながら、僕は上で書いたカフェの店長さんのことを思い出していた。彼女といもやの人たちはきっと料理へのスタンスは異なるのだろう。けれども、素材への向き合い方はもしかしたら近しいのではないか。つまり、シンプルな料理であればある程、ウソやはったりはきかない。雑に扱えば、お客さんはすぐ気付く。だから、ひたすら真摯に素材と向き合う。料理に限らず、自分の今の仕事だってそうだ。文章を書くというのはシンプルなことである。しかし、雑に書いていると、読む人にはすぐバレてしまう。簡単なようで、実はとても頭の使うことである。そして、100%できたということはない。日々修行である。
 
 そんなことを考えながら、横目でお世話になっている方を見ると、既に食べ終わっていた。こちらはまだ味噌汁を飲み干していない。慌てて海老のしっぽをたべ、しじみがうまく食べられないのを名残惜しみながら味噌汁を飲み干した。