SIM's memo

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一期一曲(8)

Jeff Beck Group "Girl From Mill Valley"(1969)
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 Jeff Beckは一言でいうと、職人気質のあるギターリストである。小細工など一切無用。己の才能を信じて、妥協を一切許さない厳しさを感じる。そんな彼がYardbirds在籍時では成し遂げられなかった理想に向けて歩み出そうとしていたのがJeff Beck Groupである。ちなみに、かれらの2枚目のアルバム"Beck-Ola"(1969)までが第1期Jeff Beck Groupである。
 かれらは一般にはhard rockの原型、あるいはheavy-metalの元祖と目されることがある。bluesを基調とする音楽スタイルにヴォーカルのRod Stewartが持ち込んだrock 'n' rollを純粋に楽しもうとするroughな部分がmixされて第1期Jeff Beck Groupは形作られていた。その中でもひときわ異彩を放った印象を与えてくれるのが、ピアニストのNicky Hopkinsだ。今回取り上げたのは、かれの作曲によるピアノ・インスト。
 
 Nicky Hopkinsの名前は、Beatles好きにとっては忘れられない。1968年の"Revolution"というこれまたハードなナンバーでエレクトリック・ピアノを演奏している。それ以前から、既に数多のセッションをこなしてきたキーボーディストで、The WhoやKinksのアルバムにも参加。ひ弱な優男の印象からは想像もつかない激しくダイナミック、そして繊細さを兼ね備えたプレイ・スタイルだからこそ、多くのセッションに声をかけられてきたのだろう。
 そんな彼の内面をよくあらわしているのが、今回取り上げた曲。遠く離れた恋人を想いつくられた曲だという。"Beck-Ola"に収録されている曲のほとんどが激しくうねるような曲が多い。そんな中、かれの曲が一服の清涼剤のように聴こえる。この曲の収録を気難しいJeff Beckが許したというのは、それだけNicky Hopkinsの才を認めていた証左だろう。
 
 第1期Jeff Beck Groupが解散した後、Nicky Hopkinsは活動拠点をイギリスからアメリカ西海岸へシフトする。そして、サイケデリック・ロック・ブームを経たSan Franciscoで産声をあげた当時を代表するグループのひとつ、Quicksilver Messenger Serviceに参加。重要な役割を担うことになる。