SIM's memo

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一期一曲(37)

The Smiths "This Charming Man"(1983)
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 The Smithsというバンドは、よくも悪くも(というかそれが全てなのだが)ヴォーカルのMorrisseyとギターのJohnny Marrというふたりの個性による花火をエネルギーとしていたなあと思う。そして、Morrisseyの書くひねくれるけどウィットに富んだ歌詞とJohnny Marrが奏でる変幻自在のギターと彩り豊かなソングライティングこそが、The Smithsの真骨頂だった。とりわけ、2枚目のシングルでかれらの紙価を高めた曲でもある"This Charming Man"を聴くと、そんなことを思う。
 
 繊細だけど攻撃的なイントロのギターではじまり、The Supremesの"You Can't Hurry Love"でおなじみのドラミングとベース・ライン。そしてMorrisseyのやや野太くもガラスのように脆そうな歌声。これらがひとつとなり、この曲でしか出せないグルーヴ感でもって"This Charming Man"は構成されている。懐かしき80'sのイギリスのミュージック・シーンの空気が漂ってはいるけれども、それを抜きにしても今なお新鮮な輝きを失っていない。個性と緊張感が大切である何よりの証である。
 
 僕がはじめてこの曲を聴いたのはいつだったのだろう?と思い出そうとした。おそらく20代半ばだったのではないかなと思う。はじめはMorrisseyの歌声に馴染めなかったが、Johnny Marrのカラフルなギター・プレイと曲にだんだんと魅了されていった。この曲は不思議と、その時々の記憶が結びついておらず、聴く度に純粋に向かいあえる稀有な曲なんだなあと改めて実感している。記憶に覆われることの多い曲のなかで、それはとても貴重だと思っている。だから、いつまでも聴いていたいなと思う。