SIM's memo

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積読状態の書籍で振り返る2014年

 なんだか2014年があっという間に過ぎていってしまうと感じるのは、年齢のせいなのだろう。気がつけばもう大晦日。毎年、拙ブログで我が読書を振り返っているが、今年は視点を変えて、2014年に購入し積読状態のままだけれども、気になっている書籍を3つをテーマで振り返ってみたい。

大物たち

 この三者はネーミング・バリューも去ることながら、書籍の値段も大物と呼ぶに相応しい。坪井は日本における人類学の礎を築いた人物。仕事で坪井のことを調べていて、俄然興味を抱いた。江戸っ子ということもあってか、軽妙洒脱な随筆に心惹かれ購入。
 毎年、20世紀のポピュラー・ミュージックにまつわる書籍を購入している。2014年はAtlantic Recordの経営にも参画し、その発展に大きく貢献したジェリー・ウェクスラーのくせのある自伝がみすず書房から出たので、ない金はたいて購入。ちびちび読んではいるのだが、一気に読むにはおなかいっぱいなエピソードの連続なのだ。New Orleans Soundに精通し、Led Zeppelinの契約に偶発的にこぎつけた口舌の徒で癇癪持ちのウェクスラー。こういうクセのある人って、昨今だいぶ少なくなってきたなあと感じている。
 そして2014年は、ついに巨人の全作品集の翻訳が完結。佐藤良明氏の執念とも言える訳業ここに極まれりという感じだが、おそらく道半ばという思いなのだろう。なにせ、ピンチョンである。秀才と変態との幸福な共生を実現する稀有な作家を相手にするのだから、並大抵のことではやってられない。この書籍を手にする度に、自分への叱咤としている。そういう書籍ではないのだけれども。

組織に属さず仕事をすること

 晩秋から初冬にかけて、チャンドラーのフィリップ・マーロウものが読みたくなった。過日、マーロウもののパスティーシュであるベンジャミン・ブラック『黒い瞳のブロンド』(ハヤカワ・ミステリ)を読了した。都会を生きる孤高でセンチメンタルな騎士・マーロウがよく描けていた。組織に属さずひとり行動するのは気楽な面はあるけれども、自分の中にあるルールを設けていないと折れてしまうなあと読みながら考えてしまった。現在、フリーで仕事をしている身としては、マーロウの姿というのは、これまで以上に身近に感じる。とにかく、個人で仕事をしていると、周りに振り回されることがとても多い。身につまされつつ、マーロウのように独り言が増えてくるのがフリーの仕事なんだなあとも実感。ちなみに、上に挙げた2冊いずれもチャンドリアン村上春樹氏の訳である。

図録曼荼羅

 2014年は例年になく図録を購入した。しかしそのほとんどは、実際に展覧を観ることがなかった(というかできなかった)。岸田三代の展覧は岡山へ旅をした時に知り、迷わず図録を求めた。オリーブと若草色の装丁が岸田三代のイメージにピッタリだった。
 『柳瀬正夢』は鎌倉の神奈川県立近代美術館を訪れた際に求めた。約450ページではあるが、図録の厚みはさながら辞典のよう。決して長い生涯ではなかった柳瀬の足跡を丁寧かつ多角的にとりあげている。1930年代頃の日本におけるアヴァンギャルドの一側面を知る貴重な図録だと思う。
 そして、3点の図録の中で唯一観に行ったのが『スサノヲの到来』。足利市立美術館というところは、個性的な企画展を催すので毎年行っては図録を購入している。今回のは、今の日本に蔓延している「怒」と「祈」そして「命」をめぐる批評的な展覧だった。ただ実際に観たからこその図録であり、図録のみを見ていると、やっぱり観ないとその迫力は伝わらないと痛感。でもいい図録であることには変わりはない。

2015年に向けて

 そんな訳で、今年も暮れゆこうとしている。積読は端からみれば、無駄遣いに見えるかもしれない。言い訳になってしまうが、積読の分だけ、知識の蓄積をもたらしてくれる可能性を秘めていると思っている。
 2015年は個人的にはこれまで以上に気を引き締めていかないとと思っている。好奇心を失うことなく、柔軟な感性と思考、そしてほどほどの適当さで過していきたい。
 

うしのよだれ (知の自由人叢書)

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私はリズム&ブルースを創った ―― 〈ソウルのゴッドファーザー〉自伝

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トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)

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高い窓

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大いなる眠り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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