SIM's memo

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再読すること

 今年の年頭に掲げた目標のひとつに「再読」があった。今年も残りあと3ヶ月になろうとしているが、今のところこの目標は達成できる見込みはない。そもそも再読をあまりしないから、古きをたずね、新しきを知るために掲げた目標だった。
 
 振り返れば、小説の場合、再読をする作品はごくごく限られている。村上春樹の一連のエッセイ(ここ5、6年再読してない)、Raymond Chandler "The Long Goodbye"(2年に1回は必ず再読)、石川淳の「普賢」、そして漱石のいわゆる三部作。これだけだ。
 
 再読はまた会いたくなる人のようなものだと思っている。そのことを敷衍すれば、村上春樹やChandler、石川淳はまあわからないでもない。けれども何故漱石の三部作なのか、よくわからない。先日、書店で岩波文庫の棚を眺めていたら、装丁が変わった『それから』と『門』があった。最近、「朝日新聞」で再連載されていたためだ。そしてこの文庫を購入。また読みたくなってしまったたまだ。家には『漱石全集』があるにもかかわらず、である。
 思うに、漱石の作品世界はものすごく身近ではないけれども、まったく異質とは思わない、ファンタジーと現実の端境にある感じが好きなのかもしれない。喜怒哀楽が激しい訳ではないし(漱石よりもちょっと前の尾崎紅葉『多情多恨』はなかなか激しい)、淡々と話が進んでいるようで、実は水面下ではドロッとしたなにものか(漱石が敬愛していたW. Jamesの影がちらつく)が100年後を生きている僕には親近感がわくのだろう。漱石村上春樹の作品世界は近似しているように感じる。直感なので、具体的かつ論理的に説明するのは難しいけれども。
 
 そんな訳で、これから『それから』を再読しようと思っている。「久しぶり!」と爽やかに挨拶する感じではなく、「あ、ご無沙汰」みたいな感じで。