SIM's memo

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輝く!積読状態の書籍アワード2015(下)

ヴィジュアル本で想像の旅を巡る

  • 芳賀日出男『日本の民俗 祭りと芸能』(角川文庫)
  • 二村 悟(監修)『ニッポン産業遺産の旅』(平凡社
  • 細萱 久美『函と館』(平凡社

 さて、今年はヴィジュアル本をそれなりに購入しました。仕事の一環というのがほとんどでしたが、気になってしまう基準というのがあります。それはエディトリアル・シップがきちんとしている書籍かどうかです。そう考えると、上記の3冊はそれぞれに個性的です。その中で選んだのが・・・

函と館

函と館

何が素晴らしいって、まず幾何学模様と円形に収めた写真という表紙デザイン、そしてどこかなつかしくなるようなフォント。函館の魅力を満遍なく紹介しているところもいいのですが、フィルムで撮影したの?と思わせるような写真の質感がいいです。こういう書籍を丁寧につくりたいと思わせてくれた一冊です。じっくり味わいたいので、まだ積読状態にしております。
 

新書で辿る思考の迷宮

 今年も例年通り、新書をたくさん購入しました。だいたい岩波か中公に偏っていますので、ノミネートされた書籍も自ずとこういうことになってます。そんな中、選ばせていただいたのが・・・

ヒョウタンって不思議です。「瓢」とも昔は言っておりました。実をくりぬいて乾燥させると器になります。ヒョウタンに入った水をうまそうに飲む場面に出くわすとワクワクしたものです。そんなヒョウタンのことをよく知らないなあと思って購入。身近なモノの歴史を新書というハンディな形態で読めるというのは有難いことです。
 

変化球も

 例年だと、人文系で歴史・哲学関係の書籍を多く購入するのですが、今年はちょっと毛色が違うものも購入していました。よく言えば好奇心と言えるのでしょうが、関心事が散漫なだけとも言えます。そんな中、迷いに迷って選んだのがこちら。

パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する

パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する

タイトルと表紙にちょっとびっくりしてしまいますが、中身はいたって真面目です。しかも読みやすい!著作権を考えるとき、どうしてもオリジナリティーor創造性ということを考えてしまいます。しかしそんなものってあるんでしょうか?本書はそんな疑問に対して、ファッション、料理、コメディーなどから「パクリ」がいかに創造性に寄与しているかを例証しています。「パクリ」といいましたが、問題はアレンジです。ひとひねりです。それは作品はみんなのものという「パブリック・ドメイン」の問題に行き着きます。11月下旬に出版された本書はもっと話題にのぼってもいいように思ってます。
 

(おまけ)いただきもの

  • 『竹のめざめ』(栃木県立美術館)
  • 『おじさんの顔が空に浮かぶ日』(宇都宮市美術館)

 今年は実に多くの書籍をいただきました。その中で、読了してはいないけれども、パラパラとめくっている(これもまた積読状態を指します)のが上記の2冊。『竹のめざめ』はこの企画を担当した若き学芸員さんよりいただきました。竹工芸が専門なのですが、彼女の工芸への愛情を深く感じました。『おじさんの〜』はこのプロジェクトに参加した方より頂戴しました。このプロジェクトについては、こちらを参照ください。メディアにも多数取り上げられました。
 

それでは、2015年積読状態の書籍大賞は・・・?

 長らくのお付き合い有難うございます。それでは、大賞の発表です。大賞に選ばれましたのは、こちらの書籍です!

これまでの部門から選ばないんかよーって言われそうですが、本書の引き寄せられ方は尋常ではなかったのでこちらを選びました。なにせ、ページをめくって出てくるのが、赤痢の病原菌を発見した志賀潔のどアップ写真。土門拳という人の真骨頂がよーくわかります。これら撮影した人たちをめぐるエッセイを読みたくならない訳がありません。そんなことで、土門拳に改めて魅了された年末でした。
 
 正月は積読状態の書籍を読むのを楽しみに過ごしたいと思うのですが、3日から仕事なのでどうなることやら・・・。皆さま、本年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。