SIM's memo

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裁判傍聴と更生の難しさ(2)

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記者会見をする原裕美子さん@太田市役所記者クラブ

 正午、太田市役所へ移動し、記者会見場である市役所記者クラブ室へ。すでにキー局のテレビカメラはセッティング済みで、こちらもいそいでテーブルにマイクをセッティング。当初、原さん側の要望で12時30分開始に変更されたが、色々あって当初の予定通り13時から開かれた。
 記者会見前、クラブ室入口前にあるソファーに、原さんと弁護士、そして原さんのご両親が座っていた。弁護士が原さんに執行猶予がついたけど、決して軽い刑ではないことを切々と説いていたのが印象的だった。
 
 会見は原さんの謝罪からはじまった。感情が込み上げてきたためか、途中嗚咽とともに涙ながらに謝罪。その後は少し落ち着いたのか、記者たちからの質問に誠実かつハキハキと答えていた。私は会見場から出た入口付近で会見を見ていた。私の斜め後ろには、原さんのお父さんが腕を組みながら微動だにせず会見を眺めていた。途中、私はマナーモードにしていた携帯電話に着信の合図がしたので会場を出た。電話が終わり、また会場に入った時、原さんのお父さんが履いていた靴と表情を変えずにじっと見つめていたお父さんの表情が強く印象に残った。お母さんは終始ソファーに座ったまま、原さんの会見は見なかった。
 
 予定時間を大幅に超えて、14時半に会見は終了。約1時間半あまりをしっかりと受け答えている原さんの姿は、それまでのマスコミの前に出ることを恐れていたという姿は微塵も感じさせない、何か覚悟を決めたように見えた。
 原さんがお話されていたことで重要だと感じたのは、摂食障害による窃盗症の治癒過程の報道を強く訴えていた点だ。なぜ摂食障害が窃盗症を引き起こすのか?これが病気だと言われた時の驚きと、ではどうやって摂食障害が治癒されていくのか、もしも同じ病気に悩んでいる方がいたら、原さん自身の経験がきっと役立つはず。そういう思いを強く感じさせる会見だった。
 それともうひとつ、私が見ていて改めて感じたのは、摂食障害をはじめとする依存症へと繋がる病気の根っこには、孤独感と人と人とのつながりが切れてしまうことの不安がある点である。原さんが治癒していく過程で重要な役割を果たしたのは、現在勤めている会社の社長をはじめとする同僚たちとの関係である。社会とのつながりを断つことは、この病気の克服を妨げる要因である。そのため、もしも原さんが実刑になった場合、刑務所へ収監され、今ようやく構築されてきた原さんと「社会」(ここでは現在原さんが在籍している会社など、原さんを取り巻いている環境)とのつながりを断ち切ってしまうことになると私は思っていた。
 
 摂食障害をはじめとする依存症へ繋がる病気は、当事者と関係者、当事者と関係者以外の人たちとのつながりを保持しながら、このアポリアに立ち向かうことがポイントとなる。「更生」とはもとのよい状態に戻ることでもあり、生き返ること、よみがえることでもある。原さんは摂食障害という地獄を生きながら、結果として罪を犯し、自分自身と向き合い、時に己を突き放しながらもがいてきた年月を過ごしてきたと思う。会見の最後に深々とお辞儀をした原さんの姿に、辛かったであろう年月を感じずにはいられなかった。