SIM's memo

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僕の平成史(3)〜ドラマの再放送と『桃尻娘』との出会い〜

 平成3(1991)年4月、私は自宅から片道1時間20分ほどかかる公立男子校へ入学した。首都圏にお住いの方には、片道1時間20分なんてそんな遠くないだろうと思われるかもしれない。しかし、こちらは田舎である。まず自宅から最寄駅まで、片道6kmを自転車で約20分。残り1kmに300m程続く坂道を登らなくてはならないという苦行がある。それから電車で30分揺られて学校の最寄駅に下車。それから片道4kmを自転車で約10分かけて通う。これを3年間。こうして振り返りながら書いていても辛いことしか思い出せない。学校から一刻も早く離れたかったので、部活には入らずさっさと帰宅した。昨年の今頃、この頃の淡い思い出を書いたのだが、今にして思えば、もう少し日々を楽しむようなことをうまくやれたのではないかと思ったりする。
 
 ところで、私が通う学校は毎年5月下旬に85kmを26時間かけて歩くという行事があった。辛かったが、毎日学校に通うことを考えれば、思いのほか辛いと思うことはなかった。ただただ、学校へ行くのが苦痛だった。私にとっては、この3年間はムショ暮らしのような感じだった。だからだろうか、どうも窮屈で一箇所にとどまるというのが、社会人になってますます苦手になってしまった。
 この年のささやかな楽しみは、急いで帰宅してドラマの再放送を見ることだった。「ふぞろいの林檎たち」(新潮文庫から出ていた脚本も買うほど好きだった)や「東京ラブストーリー」(始まる時間に間に合わず途中から。しかし、なぜ、このドラマを夢中になって見たのかわからない)などなど。おそらく娯楽があまりなかったからだろう。
 それと、この年にはじめて、橋本治の『桃尻娘』(講談社文庫)を購入、以後このシリーズをはじめ、橋本治の本をよく読むようになった。きっかけは、学校で課題図書を購入するということで、そのリストに『桃尻娘』がなぜか入っており、なんだかタイトルが珍しかったからだ。
 平成最後の年の1月、橋本治が亡くなった。私の中での数少ない「平成」がひとつ消えた。*1

*1:近日、青土社から『ユリイカ』2019年5月臨時増刊号で橋本治の総特集本が出る予定。