SIM's memo

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AVの昨日・今日・明日(1)

 昨日、サイゾーに掲載されていたAV*1男優の加藤鷹のインタビュー記事を読んだ。加藤は最近、AV男優を「卒業」すると宣言し、インターネットのニュースでも取り上げられていた。まあ、それくらいこの業界では有名な人物である。その加藤が、3年前からAV男優を「卒業」したと噂されていたことについて触れながら、こんなことを述べていた。

今は大量生産・低コストだから、いかにお金を使わないかってことしか考えてない。ちょっとでもいいモノを作りたいって考えてる人が、いなくなっちゃったんだよね。

 
これはAV業界に限らず、様々な業界で見られる光景だろう。AV業界はここ5年あまりで急激にリリース本数が増えた印象がある。事実、先の記事でも加藤が指摘しているように、年間10万タイトル余もリリースされている。これはメディアが多様化し、以前よりも主要媒体であるDVDが売れなくなってきていることも関係しているかもしれない。あるいは、業界における利益といいものをつくろうとするヴァランスが崩れているのかもしれない。そうだとすれば、これもまた、AV業界に限らず、テレビやラジオで再三言われていることである。
 AV男優になったきっかけを話したのち、加藤はこんなことも述べている。

本当にいいモノを作りたいと思っていれば、たとえば監督が自分のギャラを多少減らして……っていう発想になると思うんだけど、(中略)自分の撮りたいモノを作って、それで赤字になっても関係ない、みたいな。まあ、それが(今は:引用者註)許されない時代なんだろうけどね。だから、日本映画もアダルトビデオもショボくなってるよ。(中略)
会社から「こういうの撮って」という紙が来て、その通りに作るということしか考えてないんだから。別に昔がよかったとも思わないけど、単純に志が高い人間が多かったような気がする。「給料が安くても、エロ好きだからいいんですよ!」っていうヤツがいっぱいたからね。だから、よく「鷹さんに続くスター男優が出てきませんね」なんて言われるけど、別に若手が悪いわけじゃなくて、スター男優を育てられない今の業界自体に問題があると思う。

 
加藤のこの発言を読みながら、頭の片隅にあったのは、ドキュメンタリー系AVを撮り続けているカンパニー松尾の作品であった。(続く)

*1:アダルト・ヴィデオ:以下、略称をつかう