SIM's memo

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O:お世話になった人

 学生時代から社会人にかけてお世話になった方々はそれなりにいる。とりわけ、お世話になったという人がいる。
 大学を卒業した翌年。僕は地元の教育委員会に嘱託で文化財調査や編纂事業にかかわる事務などの仕事に従事していた。そのセクションの上司という人が僕にとってお世話になった人のひとりである。その方は東京の出身で、奥さんの縁故でこちらに勤務していた。当時その方は40代そこそこ。竹で割ったようなさっぱりとした人で、口は悪いが面倒見のいい人だった。その頃の僕は今以上にダメダメ人間だったので、よくその上司にフォローしてもらった。僕がそこを辞める際、教育長と喧嘩し辞めざるを得なくなったときも最後までかばってくれた。
 僕にとって、その方から一番学んだのは、地形を見る目である。眼前に広がる風景をただ漫然と眺めるのではなく、そこからその土地の傾向、地形にあった人びとの営みなどを教えてもらった。それが今でも大変役に立っている。思えば、あの2年間が一番楽しく恵まれた日々だった。
 
 その元上司が大病をしたという話を友人から聞いた。まさかと思い、もう一人のお世話になっている方に電話で聞いてみたら、どうやら事実らしい。しかも思いのほか容態がよろしくなかったとのこと。現在は職場復帰しているとのことで、思い切って会いに行った。
 久しぶりにお会いしたら、もっと痩せて痛々しいのでは、と想像したが、思いのほか元気そうだった。顔色も決して悪くない。聞くと、想像以上に辛い大病であるのがわかった。精神的に前向きになれなくて辛いといっていた。竹で割ったようなさっぱりとした人からそういう言葉を聞くと、胸が苦しくなった。その方は、何のためらいもなく病気のことを話してくれた。しかし、その心中たるや、かなり辛いのだろう。自分が今大変な状況なぞ、その方に比べたら何てことではないと思った。また来月、様子を見にいってこようかなと思う。お世話になった人というのは、やっぱり特別な存在なのだ。