SIM's memo

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心の拠り所

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 先週給料日だったのに、もう次の給料日を指折り数えて待っているSIMです。今はそのことしか楽しみがないという哀しみ。あたりを見渡せば、すっかり晩秋一色。♪All the leaves are brown and the sky was grey〜とMamas & Papasも唄っておりましたが、ここ田舎ではもみじは真っ赤に染まり、朝の空気が日に日に冷たさを増しています。


 さてさて、高校生の性欲のように悶々と日々を過ごしているわたくしめでございますが、心の拠り所になっているものがございます。『ドキュメント 日本の放浪藝 小沢昭一が訪ねた道の芸・街の芸』(日本ビクター)という7枚組CDです。
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取材・構成そしてナレーションは、我がこころの師・小沢昭一氏。こちらは1970年、小沢氏が一念発起し、全国各地で消えつつある放浪藝を記録し、翌71年に発表した貴重なドキュメントです。CD化は1999年の暮れ。ビクターは大衆藝能における国内レーベルの総元締でもありますから、その矜持を感じさせます。とにかく、7枚に収録された藝いずれもエネルギーに満ちあふれ、猥雑なことこの上ない、極上の藝の数々です。
 こちらに収録されてます節ものや語りあるいは説教・念仏などを聴いておりますと、アフリカ音楽を想起せずにはいられませんでした。太鼓(日本では鼓)を打ちながら、一定のリズムを反復し唄うスタイルに洋の東西はありません。一連の道の藝や街の藝を聴いてますと、街の藝にブルースを感じます(そもそも、ブルースは街の歌であることを想起しておくべきでしょう)。レコードあるいはCDで今聴くことができるアフリカ音楽は、欧米資本によってつくられたものではあります。しかしこちらもエネルギーは昨今の大衆ロックよりも充満してます。一方、日本における放浪藝に目を向けますと、ある資本によるソフィスティケートをあまり受けていないせいか、荒っぽく雑に感じます。しかし、それがまたいいのです。こうしたエネルギーに満ちあふれ、情念と怨念と欲望などがごちゃごちゃになったかたちなきかたちのようなドロッとしたものは、そう簡単には生み出せません。つまり、これが歴史というやつです。だから、僕は古きをたずねて新しきを知ることに無上なる歓びを感じるのです。
 日々ふさぎこみ、やるせなさで心折れそうになることの多いわたくしめは、こちらを聴いて励まされております。
 

日本の放浪芸

日本の放浪芸