SIM's memo

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一期一曲(23)

The Doobie Brothers "South City Midnight Lady"(1973)
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 1973年に発表されたThe Doobie Brothers3枚目のアルバム"The Captain and Me"といえば、"Long Train Runnin'"だし"China Grove"である。どちらも人気の高い曲である。しかし、僕にとってはそのどちらでもなく(好きな曲たちではあるけれども)、今回取り上げた曲である。
 
 アコースティック・ギターとスティール・ギターのやさしい音色、朗々とうたうPatrick Simmonsの声、Nick DeCaroによるストリングス・アレンジ。これらのどれをとっても、外部の人間が容易に想像できる"アメリカ"なるものを喚起してくれる。作者でもあるPatrick Simmonsはワシントン州出身ではあるが、おそらくこの曲は彼にとっての"アメリカ"なるものを想像し、追体験しようとしていたのかなと勝手に思っている。途中で切断された高架の高速道路とゴールド・ラッシュ期のアメリカ西部のイメージを想起させる四頭立て馬車を配置したジャケットは"アメリカ"なるものが端的に表されている。そういえば、同じ年に発表されたEaglesの"Desperado"のジャケットが西部開拓時代の伝説のギャング"Doolin Dalton"をコンセプトにしていた。
 
 とはいえ、"South City Midnight Lady"は実のところは、タイトルに表されているようにデルタ地帯のつまり南部地方の音楽へのオマージュでもあろう。かれらに限らず、当時のアメリカン・ロックでは"アメリカ"なるもののルーツを探るという試みが多く見受けられた。それは、当時泥沼化していたベトナム戦争等の政治的な緊張による"アメリカ"の終焉を感じさせる不安定な時期だったからこそ生まれてきたのだろう。Patrickがどこまで意識していたかわからないが、この曲のもつオマージュ力はかれの意思を超えて、時代としっかりリンクしていたんだと思っている。