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一対他の世界 ─『きょうの猫村さん』を読む(2)─

きょうの猫村さん』の世界像

 『きょうの猫村さん』3巻をお話する前に、この作品の世界像を見ておきましょう。身よりのない猫だった「猫村ねこ」(以下、猫村さんと略す)が、以前飼われて家のぼっちゃんに躾けられた家事全般の能力を見込まれて、たまたま訪れた「村田家政婦紹介所」に住み込みで働くことから物語が動きだします。猫村さんは、自分をいっぱしの猫として躾けてかわいがってくれたぼっちゃん(家族の事情で海外へ行ってしまいます)を探すため、一生懸命に働いています。そうした猫村さんの日常が物語の大枠であり、物語における「現実」の世界像です。猫村さんが出会う人や動物、モノとの関係性によって物語の世界像は織られていると言っていいでしょう。
 さて、猫村さんを中心にどういった人たちがかかわってくるでしょうか。大きく分けて2つのグループにまとめることができます。

  • 村田家政婦紹介所猫村さんの拠点、家族(村田の奥さん、山田さん、小管さん(原著表記のママ)、同僚の中年女性)
  • 犬神家猫村さんの奉公先(犬神家主の金一郎、犬神夫人、息子のたかし、娘の尾仁子、金一郎の母、ステテコ[尾仁子がこっそり飼っている犬])

その他に、様々な登場人物たちが登場してきますが、基本的にはいずれのグループから派生した人間関係です。つまり、猫村さんが村田家政婦紹介所から奉公先の犬神家の往復で出会う人たち(e.g.肉屋のぼっちゃん、山本電機の小さな息子、こわがりの奥さん)です。
 ここでひとつ指摘しておきたい点があります。『きょうの猫村さん』は基本的に女性たちが中心となっている世界です。ここで男性は、女性たちからすれば他者=周縁として描かれつづけています。これは、猫村さんが女性(♀)であること、家政婦紹介所という女性たちのコミュニティーに属していることと深い関係があります。この点は後ほど詳しくお話していくつもりです。
 ここでは押さえて欲しいポイントは、『きょうの猫村さん』という物語の登場人物たちは、猫村さんを媒介として、大きく2つのグループにまとめることができるという点です(つづく)。