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輝く!積読状態の書籍アワード2016(下)

サブカル?の底力

今年も内容はもちろんのこと、装丁や収録された写真のインパクトに圧倒された書籍に出会うことができました。ありがとうございます。いろいろあって迷ったのですが、そんな中選ばせていただいたのは・・・

東京右半分

東京右半分

大著です。ずっしりとした重さもさることながら、ページをめくると、文字とイメージの荒海に一気に飲み込まれます。僕は泳ぎきる体力に自信がないので、積読状態にしております。昨今の日本の不気味な右傾化の中、本書が語る「右傾化」(23区東部)のディープでアーシーな雰囲気にむせかえること請け合いです。ちなみに、著者の『圏外編集者』(朝日出版社)を僕は折に触れて読み返しては、自分に鞭打っております。
 

図録

今年は仕事柄、多くの図録を購入しました。限られた予算の中で制作された中、どれもこれもすばらしい図録の数々でした。いろいろあって迷った中で選ばせていただいのは・・・

2012年2月に開催された企画展の図録です。村山知義という人は「多彩」と一言では片付けられない人です。ベルリンでいちはやくダダや構成主義といった新興芸術を吸収し、日本の近代美術に大きな影響を与えましたし、演劇も小説も書く、日本共産党員でもあり、蔵原惟人とともに日本プロレタリア文化連盟(コップ)結成に尽力し、トランスジェンダーダンスパフォーマンスもするなど領域横断的な活動をしていた人です。かれの仕事の全貌をまとめたこの図録を4月に京都国立近代美術館へ行った際、ようやく購入できた思い出深い1冊。ですが、時間と体力がないと落ち着いて読めないので、これまた積読状態となってしまっている訳です。
 

しなやかだけど骨太な学術書たち

 今年もそこそこ学術書というものを購入しては積読状態にしてしまってました。もちろん、読みたいから購入していたのですが、目先のことに振り回されたり、自分に言い訳をしたりしているうちにこんなことに。そんなこんなで選んだのは・・・

九鬼周造 理知と情熱のはざまに立つ〈ことば〉の哲学 (講談社選書メチエ)

九鬼周造 理知と情熱のはざまに立つ〈ことば〉の哲学 (講談社選書メチエ)

近年、九鬼周造研究はかなり進んできた印象がありました。岩波文庫で九鬼の著作が出されもいます。そんな中、今年(2016)は九鬼周造没後75年ということもあってか、『現代思想』でも特集号が発行されたりと彼の業績が注目されています。京都大学日本哲学史を教えていた著者による本書は、九鬼周造研究の里程標になる予感があります。九鬼はロゴスとパトスのはざまにゆらめいた人だったので、ロゴスが凶暴になり、パトスが反乱を起こしている現代にふさわしい哲学者として見直されているのかもしれません。
 

そんな訳で年間アワードは?

 以上、6部門に分けてそれぞれ振り返ってみました。では、2016年積読状態の書籍の中で選ばれた1冊はこちらです。

まちづくりの哲学:都市計画が語らなかった「場所」と「世界」

まちづくりの哲学:都市計画が語らなかった「場所」と「世界」

いやあ、これなんですよ。実は積読状態ではあるのですが、すでに150ページほど読み進めているのです。ですが、全部で500ページ近くある本書の情報量がすごい。正直ついていけてません。日頃運動をしていないでフルマラソンを走るようなものです。ですが、面白い。宮台真司氏の膨大な知識量に裏打ちされた饒舌のみならず、建築界の大御所でもある蓑原敬氏のこれまた該博な知識と理路整然とした語り口で、難しいけれども惹きこまれてしまう1冊。ミネルヴァ書房はいい本を出してます。
 
 来年はどんな書籍に巡り会えるのか、今から楽しみなのです。とはいえ、節約をしていかなくてはならないので、来年は積読状態の解消がテーマになりそうです。が、やっぱりたくさん買ってしまうのでしょうね。仕方ないですが気をつけます。
 
 本年も拙ブログを読んでいただきありがとうございました。よい一年をお過ごしくださいませ。