SIM's memo

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転換期だった2017年

 早いもので、2017年も残すところあと2日。振り返ってみると、秋以降、個人的に転換期に来たなあと思うことが多々ありました。中でも、3年近く(月1でしたが)出演させていただいた地元ラジオ局の音楽番組が年末をもって終了となったことが、個人的には最大の出来事でした。
 終了については、不幸な(だけど、ある意味必然的な)出来事が重なったためだったのですが、僕にとってポピュラーミュージックを真正面から見つめ直すよいきっかけになりました。もちろん、パーソナリティーをはじめ、一緒に出演した方々から多くのことを学ぶことができました。幸い、皆さんとは今後もお付き合いが続くことになりそうなので、音楽をさらに楽しんでいければと思ってます。
 そんな訳で、これまでの丸3年間で僕が紹介したテーマを備忘録&よき思い出的に残しておいておこうと思います。
 

2015年

《1月》Nicky Hopkins
《2月》受験時によく聴いていた曲たち
《3月》My Favourite Singer Songwriters
《4月》春なので個人的R&B入門
《5月》The Moveからみるpsychedelic rock
《6月》Happy Birthday! Jeff Beck
《7月》Graham Gouldman
《8月》お盆なのでお気に入りのdrummerたち
《9月》Lesley Gore
《10月》From Everly Brothers to Gram Parsons
《11月》George Harrison & His Friends
《12月》Happy Birthday! Dionne Warwick

月1ながら、レギュラーとして番組で30分、自分の好きな曲を選べてしゃべるという気負いがテーマから感じられます。第1回目にNicky Hopkinsをとりあげたのは、もっと彼の素晴らしさを知ってほしいと常日頃から思っていたから。あと確かこの年に亡くなったLesley GoreQuincy Jonesという偉大なプロデューサーの原点として彼女を知って欲しかったため。個人的には、パーソナリティーの方にEverlyの回の選曲を褒められたのがうれしかったです。

 

2016年

《1月①》Ronnie Lane at Faces
《1月②》Chris Montez at A&M era
《2月①》Farewell! Grenn Frey
《2月②》Raspberries
《3月①》Memorial Maurice White
《3月②》よく聴きゃ似てるこの2曲
《4月》Roy Wood
《5月》Gryn Johns
《6月》70's Pops
《7月》Chris Thomas in 1974
《8月》Summer Days
《9月》Ellie Greenwich
《10月》Groovy the Isley Brothers
《11月》All Things Must Pass & Layla
《12月》The Byrds & The Beatles

この年の1〜3月までは、僕のわがままで月2回やらせてもらえてました(今考えると、スゴイことです)。この時期にGrenn FreyとMaurice Whiteが亡くなったので、当初予定していたものと差し替えてとりあげました。プロデューサーに目をつけて紹介する(Gryn JonesとChris Thomas)というのは、僕自身の音楽体験を振り返っていたんだと思います。個人的には、Ellie Greenwichはもっと知ってほしい方です。

 

2017年

《1月》Humble Pie
《2月》Average White Band
《3月》喫茶ロックからラウンジ・ミュージックへ
《4月》My Favourite Guitarists
《5月》Look Back at British Beat Groups
《6月》Rainy Seasons
《7月》Happy Birthday! Harry Hosono
《8月》TARO Sonic 2017
《9月》Mellow the Isley Brothers
《10月》Valerie Carter & Lowell George
《11月》George Harrison at Psychedelic era
《12月》50's R&B Chorus Groups

3年目は、一緒に出演していたIさんがとりあげるテーマをお互い事前に報告しながら、相互的に影響し合うように考えてました。テーマ自体は平凡ですが、とりあげた曲は僕なりにパーソナリティーの方やIさんを意識しながらの、いわば試験解答のような気がしてます。

 
 最近、ピーター・バラカン氏の『ラジオのこちら側で』(岩波新書)を読み返し、バラカン氏がラジオに出演した当初、選曲さえやらせてもらえなかったというエピソードが書かれていました。僕は選曲もおしゃべりもさせてもらえたのは、決して当たり前のことではなかったんだな、と背中がひやりとしたと同時に、パーソナリティーとディレクターの方のおかげだという思いを新たにしました。そしてラジオ、ことに音楽をメインにやる番組は、スポンサーがなかなかつかず、どの局でも厳しい状況におかれている中、やっぱり夢のような時間だったけど、修行の場でもあったなと改めて思った次第です。
 
 番組は終わってしまいましたが、僕の音楽人生はまだまだ続きそうです。

Gozo & Dylan(Part Ⅱ)

21世紀のAmerican Popular Musicを奏でているDylan

 今月(4月)に入って、日本の主要都市でツアーを行ってきたDylan. 一緒に行ったM氏から予めset list&音源を送ってもらっていたので、だいたいこんな感じの曲をやるんだなーとはわかっていた。けれども、月並みな表現だが、生演奏による音の塊を受けながら聴くのは驚きだ。Dylan版ムード歌謡といったテイストの曲も結構あったのだが、基本的にはRock 'n Roll. 月日の流れとともに姿形は違えども、半世紀前にacousticではなくelectric guitarを持ってステージに現れた時とbaseは何ら変わっていない。それがわかったのが、まず嬉しかった。
 変わっていないというのは、何も進化も変化もないということを意味しているのではない。これは、アンコールでやった"Browin' in the Wind"を聴いてもらうとわかるはずだ。しゃがれた声で「これ、新曲なんだけど聴いて」と言われてもまったくわからない。2016年時点での"Browin' in the Wind"。その時々で最新の音楽潮流をとらえながら、再解釈する。Dylanほど接頭辞の"re"が似合う人はいない。
 

時空を往還する軽やかさ

 吉増剛造Bob Dylan二人に共通しているなあと感じたのは、今ある地点を軸に過去と未来を自由に往還している点だ。その姿はとても軽やかに見えた。これを円熟という言葉で片付けるのは違う。大きく息を吸い込んで、ゆっくり息を吐くように言葉を奏でる2人。かれらの身体から発せられる力を同じ空間で共有できたのは、何よりも得難い経験だった。この2日間の出来事を、僕はゆっくりと今整理している。そうしないと、次に進めないような気もしている。
 

Dylan Revisited ~All Time Best~(完全生産限定盤)

Dylan Revisited ~All Time Best~(完全生産限定盤)

メランコリー・ムード

メランコリー・ムード

Gozo & Dylan(Part Ⅰ)

 どうもご無沙汰しております。皆様、お元気だったでしょうか?こちらは相も変わらず、俗事にもまれにもまれた日々を過ごしております。が、24・25日の2日間は、僕にとってのコペルニクス的転回をもたらしてくれた2日間でした。主人公は、吉増剛造Bob Dylan.
 なぜこの2人なのか?まず吉増剛造から。24日、足利市立美術館で開催中の企画展「画家の詩、詩人の絵」のイベントとして、本企画展にも出品している詩人のトークセッションに参加した。吉増の名は、学生時代から常に目にしてきた人である。そして、僕の好きな田村隆一のエッセイにも度々登場する詩人ということもあって、その人の姿を間近で見られるまたとないチャンスだと思ったためだ。ちょうど、講談社現代新書から、彼の自伝も出たこともあった。
 そして、Dylan。翌25日、渋谷はBunkamura オーチャードホールでのライブ。今年75になるDylanの「今」の姿と声を聴きたくて観てきたいってもいい。
 

時代の雰囲気を受け止めながら、過去と今を往還する

 約60名ほどの客席のところへ入ってきた吉増は、とにかく笑顔が素敵な人だった。時に眼光鋭い詩人の顔になるのだが、僕は彼の笑顔にグッと心を掴まれた。イヤホンを耳にし、レコーダーを回しながら話す吉増*1。そうした彼の日常の営みに、僕たちも参加しているというのに素朴な驚きと面白さを感じつつ話に耳を傾けていた。
 吉増は声とリズムを大切にする詩人である。そして、「今」を生きる時代の匂いをかいだり肌で感じながら文字を刻んでいる詩人である。話を聞きながら、そのことを痛感できたのが大きな喜びだったし衝撃だった。何よりも、懐古趣味的に過去を振り返るのではなく、今と往還しながら「今」を生きている。そして、あちらこちらから聞こえてくる時代の声を、自らの身体で増幅させながら言葉を刻み続けている。
 振り返って、今の僕に足らなかったのは何だろう?それは、あまりにも当たり前に思えていた「音」のある日常と空気感への感受性だ。
 吉増剛造の現在進行形の姿を見、声を聞けたのは、とにかく僕に衝撃をもたらした。(続)
 

画家の詩、詩人の絵 - 絵は詩のごとく、詩は絵のごとく

画家の詩、詩人の絵 - 絵は詩のごとく、詩は絵のごとく

*1:彼が現在行っているプロジェクトというか日々の営み

一期一曲(40)

The Isley Brothers "If You Were There"(1973)
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 半世紀余りのキャリアを通じて、1970年代におけるThe Isley Brothersはとにかくスゴかった。何がスゴいって、ファンキーでありグルーヴィーでありメロウであり、そしてポップだった。R&Bというジャンルの垣根を軽々と越えて、かれらは燦然と輝いていた。その輝きを象徴しているように感じるのがこの曲。Sugar Babeの"DOWN TOWN"のイントロの元ネタとして、知る人ぞ知る曲でもある。もしかしたら、WHAM!のversionの方が有名かもしれない。けれども、個人的には断然オリジナルである。
 
 冒頭のクラヴィネットの音とドラム・パターンの絡みが気持ちがいい。ファンキー&グルーヴィー&メロウ&ポップという要素のすべてが詰め込まれている。そこへロナルド・アイズレーの湿り気と色気のあるヴォーカルが入ってくる。これがたまらない。そしてラストのコーラスもまたよし。音づくりの骨格は基本的にシンプルなのだが、シンプルであるが故に、これを完成度の高いものへ仕上げていくのは難しい。わずか3分20秒あまりでこれを聴かせるのだから、恐れ入った。本来ならば、もっと長くても文句は言われないはず。けれども、かれらは程よい尺で仕上げた。これもThe Isley Brotherの魅力だ。
 
 この曲をはじめて聴いたとき、狂ったように毎日聴いていた。そして聴きながら、アルバイト先である某菓子メーカーの倉庫へと向かっていった。この曲を聴くと、その時のことを思い出す。あまりにも不釣り合いで笑ってしまいそうだけれども。
 

3+3(紙ジャケット仕様)

3+3(紙ジャケット仕様)

 
 

一期一曲(39)

Billy Preston "Nothing from Nothing"(1974)
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 Beatles好きにとって、Billy Prestonというピアニストは忘れられない人である。メンバー間の険悪なムードの中おこなわれた"Get Back"sessionsで、ファンキーなエレクトリック・ピアノを奏でていたのがBillyである。"5人目のビートルズ"とも言われ、解散前夜のBeatlesを支えていたと言っても過言ではない。その後、Apple Records Labelからアルバムを2枚アルバムを出したり、George Harrison主催の"The Concert for Bangladesh"にも参加したりと、とりわけGeorgeとのつながりが深かった。そういえば、2002年のGeorge追悼コンサートでも"My Sweet Lord"と"Isn't It a Pity"で感動的なパフォーマンスを披露していた。
 
 前置きが長くなった。"Nothing from Nothing"である。この曲はBillyにとって2枚目の全米No.1ヒットになった曲。当時のBillyの人気はElton Johnの人気にひけをとらない程だった。そんな自身のキャリアとして絶頂期を迎えていただけあり、演奏も曲も軽快。2分38秒に詰め込まれたPopsの玉手箱のような曲である。
 
 ちょうど今くらいの時期にこの曲が収録されているアルバム"The Kids & Me"をよく聴いていた。PVでBillyはじめ皆が楽しそうに演奏しているのが印象的だった。冬の冷たい空気にこの曲の持っている温かさと感触がちょうどよく、聴いていて心地よい。今でも愛聴している1曲。
 

キッズ&ミー

キッズ&ミー

年末恒例行事がやってくる

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 師走に入り、今年も恒例行事のための準備に取りかからなくてはならなくなる。年末に収録する音楽番組(AMラジオ)で紹介するための選曲だ。気がつけば、今年で4回目。一介の素人に4回もゲストとして招いてくれるパーソナリティーのMさんに感謝しなくてはならない。
 
 で、一応毎年テーマみたいなものを自分では設けて選んではいるのだが、今回はどうしようかと夏から悩んでいた。悩んでいたけど、晩秋のある日に「これにしよう!」と思ったのがPower Popを中心とした選曲。僕の音楽の産湯はThe Beatlesなのだが、その成分を調べると、やっぱりPower Pop的メロディアスだけどノリがよいアップテンポの曲が好きなのである。ひとつ原点回帰ということで、以下のラインナップにしてみた。

  • Badfinger “Just a Chance”(Wish You Were Here:1974)
  • Buzzcocks “Ever Fallen in Love(With Someone You Shouldn't've)”(Love Bite:1978)
  • The Smith “This Charming Man”(Single:1983)
  • Squeeze “Is That Love”(East Side Story:1981)
  • 近田春夫&ハルヲフォン “東京物語”(電撃的東京:1978)
  • Matthew Sweet “Girlfriend”(Girlfriend:1991)
  • Silver Sun “Hey Girlfriend”(Neo Wave:1998)
  • Raspberries “I Wanna Be with You”(Fresh:1972)

 Power Popをテーマに選曲しようと決めた段階では、具体的にどれを取り上げようか決めていなかった。けれども、先週末にパズルのピースがすーっとはまるようにうまくはまることができた。ポイントは近田春夫&ハルヲフォン。ここがあるのとないのとでは、何か物足りなさがある。そしてもうひとつ、裏テーマがあるのだが、これは内緒だ(もったいぶる程ではなのだけど)。
 さて、今回はどうなるのやら。他のオトナたちの選曲を楽しみにしつつ、体調をととのえて週末を迎えたい。

一期一曲(38)

The Style Council "The Lodgers (or She Was Only a Shopkeeper's Daughter)"(1985)
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 1985年の初夏に発売された"Our Favourite Shop"は、The Style Councilの最高傑作と呼ぶに相応しいアルバムであり、当時のイギリスを代表するアルバムでもある。個人的には、飛び抜けてこの曲が好きというのはないのだが、バランスのよさや飽きのこない構成、おしゃれなサウンドと過激な歌詞というバランス等で好きなアルバムの1枚である。その中で1曲選ぶとすれば、色々迷ったのだが、今回選んだ"The Lodgers"にした。
 
 この曲に限ったことではないのだが、"Our Favourite Shop"は僕には深まりゆく秋のにおいがしてくる。購入したのがちょうど今頃ということもある。けれども、アルバム全体の雰囲気がからりと突き抜けるような青空ではなく、秋の曇り空を思い出させる。それを象徴しているように(少なくともサウンドに関して)思うのが"The Lodgers"である。ヴォーカルはPaul Wellerと当時の奥様であるD.C.Lee。80'sの雰囲気を感じさせる曲である。
 
 "Our Favourite Shop"というアルバムは、想い出を閉じ込めて、現在に届けてくれるアルバムとは思わない。当時よく聴いていた情景や雰囲気をそのままとどめているアルバムである。今聴くと、斬新だとは思わないが、このアルバムが発表された1985年という時代と僕が購入した時がそのままパッケージされてしまった一枚として、アルバムのタイトルよろしく、そのままお気に入りのお店に飾られているようなアルバムだと思っている。
 

アワ・フェイヴァリット・ショップ(紙ジャケット仕様)

アワ・フェイヴァリット・ショップ(紙ジャケット仕様)